本日は、長年メンタルヘルスの問題に取り組んでこられた心理カウンセラーの佐藤先生に、ゴミ屋敷とストレスの関連性についてお話を伺います。「ゴミ屋敷の問題を相談に来られる方や、そのご家族にお会いする中で、ほぼ例外なく見られるのが、深刻なストレスと自己肯定感の低下です」と佐藤先生は語ります。「強いストレス状態が続くと、人は『セルフネグレクト』、つまり自己放任に陥りやすくなります。これは、自分自身の健康や安全に関心を払えなくなる状態で、食事や入浴といった基本的な生活習慣すら疎かになります。部屋の片付けができなくなるのは、その代表的な兆候の一つです。自分を大切にする気持ち、つまり自己肯定感が低下すると、『自分なんてどうなってもいい』『汚い部屋に住むのがお似合いだ』といった歪んだ思考に囚われ、衛生的な環境を維持する意欲を失ってしまうのです。また、別の側面として、ゴミを溜め込む行為自体が、本人にとって一種の心理的な『防衛機制』として機能しているケースもあります。ゴミの山を築くことで、外界からの侵入を防ぐ『バリケード』のような役割を果たし、引きこもるための安全な空間を作り出しているのです。この場合、家族が良かれと思って無理やり片付けようとすると、本人は安全地帯を侵されると感じ、激しく抵抗します。これが、家族関係をさらに悪化させる原因となります。ご家族や周囲の方ができる最も大切なことは、本人を叱責するのではなく、まずその苦しみに共感し、安全な対話の場を作ることです。『大変だったね』『つらかったね』と気持ちを受け止め、その上で『あなたのことが心配だから、一緒に専門家に相談してみない?』と、医療や福祉の支援に繋げていく。ゴミ屋敷は心の病のサインです。そのサインを見逃さず、適切なサポートへと導くことが、解決への唯一の道と言えるでしょう」。